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ロウマッチの擦り方
■マッチラベルと赤瀬川原平

 無国籍で意味不明な家庭用マッチの図柄に突然心を奪われた赤瀬川原平は「革燐同」というグループを結成しマッチの収集に熱中した時期がある。 そして「図柄が驚くほど面白くて迫力がある古い図案はどれもこれも力がみなぎり活気に満ちあふれている。 その時代の空気中に拡散しながら人々の頭のアンテナに忍び寄りつつあった」と言っている。

 マッチラベルのデザインはてんでバラバラであるにもかかわらず、色は赤黒黄色とか赤青黄色の三色が多く図柄のタッチもすべて似ている。 作り手もバラバラなのに「あっマッチだ」と一目でわかる様式が確立されているのも面白い。

 明治10年頃までマッチは輸入品だったため国産になってもその雰囲気が受け継がれている。明治10年には日本からの輸出が始まり、輸出先で人気の高いラベルを真似て品質の悪い偽物が出回ってそのラベルの人気が落ちるのでまた新しいラベルを作った。 その繰り返しが続いたためマッチラベルは膨大な数となったのである。 それらは皆登録商標で1900年〜1930年輸出の最盛期には約5000くらいはあった。

 後年美術評論家の石子順造によってマッチラベルは「キッチュ・まがいもの?」として位置づけられた。 マッチは喫煙具でもあるので、石子はまた「“一服つけて下さい”が小休止を意味するように、日本人の生活のなかで煙草が占めていた習いの歴史はうすくない」と言っている。 今の禁煙時代では考えられないことだ。

 マッチラベルに興味を持っていた人は赤瀬川の外にも横尾忠則や谷川晃一がいる。

参考文献
『オブジェを持った無産者』赤瀬川原平著
『俗悪の思想』石子順造著

黒田 康敬
2026年02月18日